コンピュータコントロールさんは、弁天埠頭の加藤汽船ビルに入居しているデザイン事務所です。今回はスタッフの後藤さん・黒川さんから、加藤汽船ビルでのユニークな時間の過ごし方や水辺に対するこだわりなど、加藤汽船ビルを満喫した生活についてお話しを伺いました。
コンピュータコントロールさんはもともと大阪で事務所を始められたのですか?
(緑色:後藤さん)
東京にも事務所を置いていますが、東京には仕事があるときに行くという感じで、拠点としては大阪です。会社は3年前の12月にこのビルのこの場所でスタートしました。エアコンも当時は全然きかなくて、極寒の中でみんなで工事をして、なんとか始められるようになりました。(青色:黒川さん)
そのときは僕は別のアパレル関係の会社で仕事をしながら、この部屋でミシン使っていろいろしていました。僕はここを拠点に仕事をしていました。スタッフは、当初は4人で現在は6人です。コンピュータコントロールさんと加藤汽船ビルとのきっかけを教えていただけますか?
黒川がもともとこのビルの1階にあった飲み屋さんと仲良くて出入りしていました。以前、今のこの場所にはデザイン事務所が入っていましたが、東京に移転してからは倉庫として使われているのを知って、「貸してくれませんか?」と聞いてみたところ、「出ようと思っているのでどうぞ」という流れになったんです。借りた当初はこの中に小屋を作って1人で住んでいました。2週間が経とうとした頃に友達が遊びにきて、「何やってんの!」ってびっくりされましたけど。
デザイン事務所を立ち上げようと思っていたときに、知り合いに「面白い場所がある」と紹介されました。その時点では黒川とは直接の知り合いではありませんでした。コンピュータコントロールさんはどのような仕事をされているのですか。
グラフィック、アート、コピーライト等を中心としたデザインの仕事です。都心にある企業と一緒にお仕事されるのを考えると、ロケーションとしてはあまりアクセスしやすい場所では無いと思うんですが、気になりませんでしたか?
心斎橋まではビルの前からバスに乗っていますし、梅田まではすぐ行けますよ。この場所で仕事することそのものが楽しそうということに魅かれたというのが決め手として大きいです。船を見ながら仕事することなんてあります?ここに来るまでずっと7年ぐらいデザイン事務所に勤めていたんですけど、その頃はずっと窓越しに車を見ながら仕事をしていたので、この部屋のような開放的な職場環境がすごくおもしろいんです。窓の外を眺めながらアイデアを考えたりできるし、いい気分転換にもなります。
仕事の打ち合わせは7割をお客さんの事務所で行っています。後の3割はここでなんですが、お客さんが「面白そう」と興味を持っていただいて来られることが多いですね。打合せの他には取材や撮影なんかもします。お客さんを呼んでアットホームな感じでバーベキューもしますよ。この事務所は天井高があるので、荷物を片付けて事務所の中で撮影することもあるんです。これなんか、このビル近辺だけで撮影して製作しました。(カタログを見ながら)大阪じゃないみたいですね。
「海外に行かずして」ですよ。わかる人にはわかる風景ですよね、「安治川水門や」「下駄や」って。
そうそう(笑)パソコンが全て川に向いていますね。
いろいろレイアウトを考えてみたんですけど、これが一番気持ち良いよね。気持ちいいね。
みんな並んで川に向いて仕事していますよ。舟から見たら面白い光景ですね。「どういう風に見えるのかなぁ、窓に何か描こうかなぁ。」とか考えます。北向きは直射ではなくて太陽の光が景色に当たるのが見えていいですね。照明の数も多くないですけど明るいですね。
問題なくいけますね。曇りでも暗くないですよ。全体的に白い壁なんで、結構明るいです。ここならではのお気に入りはありますか?
夕方ですね。夕陽とかめちゃくちゃきれいなんです。ここで見る夕方の景色が好きで、特に夏場は外に出たくなりますね。夕方の5時とか6時とかに、夕焼けがすごい色をしていたらみんな外に出ています。
外にいって、「うわー!」です。それが気分転換。このビルの中では、ここと隣のスタジオだけの特権ですね。いちばんお気に入りの夕陽がこれです。
・・・これ、レタッチ無しですよね?すごいですね。かっこいいですね。
「この世の終わりちゃうか。」っていう。「地球に生まれて良かったなぁ。」っていう。
気分転換で行き詰まったら外に出てタバコ吸ったりして、スタッフみんな外の景色を眺めることで、一日の流れを感じながら仕事しています。川で視界も開けているので、仕事が夜中になると、東の空から朝日が出てきて雲が照らされて明るくなっていくのを見ながら明け方を迎えることもあります。「明けたねぇ。」って言って(笑)。
僕はあそこに1本見える高い煙突が一番好きなんですよ。昔はあの辺にある煙突が毎日煙を出していたんですけど、今はあの一本からしか出ないんですよ。煙が出ると、「今日も何かいいことありそう。」とか思います。煙を眺めながら仕事をするのが好きやったんですけど、最近は煙がないのでちょっと不満です。
空はきれいです。全部が絵になりますよね。それを味わうためにここにいるようなもんです。
他に珍しいこととしては、この辺はちょうど海と川の水が混じって流れが止まるところで、夏はウォーターレタスの最終着点になります。一面にウォーターレタスが並んでいます。「ひどいなぁ」なんて言いながら眺めています。ここまで海水がくるんですね。
ここで釣りしたら魚が釣れますよ。1階の工務店の方とか、フィオスタジオさんとかが、クエやシーバスなんかを釣っています。この加藤汽船ビルにはどういった方が入居しているんですか?
まず、天井画を描く絵描きさんがいます。気分転換と言ってベランダから現れたりします(笑)。スタジオさんも3つあります。ここの斜め向かいには大道具さんの事務所もあります。演劇の女優さんと大道具さんのご夫婦が子供劇団を開いていたりもします。
不思議なのが、ここの人達とは何かと妙な繋がりがあるんです。例えば、隣りのスタジオさんと僕の奥さんがずっと昔に中崎町の天人で会ったことがある等、友達の友達であったり知り合いであったりがこのビルで働いている、っていうことがすごく多いです。他には、住んでいるマンションが同じ、とか。加藤汽船ビルに「見覚えのある自転車置いているなぁ。」と思っていたら住んでいるお隣さんでした。そういう面白い人が集まっているという意味でも離れられない場所ですね。他の人との付き合いが楽しいですね。壊さなかったら部屋をどうしてもいいっていわれて、改装も自分らでやるのも楽しかったです。不便さはありませんか?
ごはんを食べるところが近くにないのが困りますね。ちょっと遠出しないとお店がないので、ランチのバリエーションにはこまります。あとは、夏は本当に暑い。・・・暑いね。冬はすきま風が寒いですね。
後藤さんは川沿いにこだわって住まれているとお聞きしたのですが?
今は御幣島なんですけど、佃との間に流れている神崎川のすぐ横に住んでいます。野田を通って中央卸売市場の横を入ったらここまで信号無しでこられる川沿いの道があるので、それを使って自転車通勤しています。
前は堺筋本町の東横堀川のすぐ近くに住んでいて、気分転換に川沿いの公園にいっていました。九条に住んでいたときは、中之島を自転車の通勤ルートにしていました。
川沿いがなんとなく、好きなんですよね。なんか。空が抜ける感じが気持ち良くて。いつか、ボートで出勤してみたいですね。渋滞とか通勤ラッシュとか関係なくなりますね。
黒川さんは、もともと川沿いが好きというのはありました?
物件を探していたときに、例えば靭公園とかの公園が近くか、川沿いは意識していました。阿波座も探しましたし、その部屋の雰囲気よりも、見える風景や近くに何があるかで探していました。
前に勤めていたアパレル事務所では、窓から靭公園が見えて、それが気分転換になっていたので、この事務所探しでも重視しようと思いました。
初めて見たときはカーテンもなかったのですごいパノラマの絵が部屋の奥に見えるような状態で、これだけでかい窓をどうしようかと興奮していました。
壁一面が窓で、「絵」になっているところなんか無いですよ!加藤汽船ビルの契約のしくみはどうなっているのですか?
船の発着があった頃はお土産もの屋さん、うどん屋さん、待合室といろいろあって、ビルが売りに出されたときに、それぞれのスペースの権利をもっていた人がそのまま区分所有という形で権利を継承しました。なので、それぞれが借りている部屋の別々のオーナーさんと契約しています。賃料もまちまちですよ。
入居したころは5年後には取り壊される状況も考えながら、「それでも仕方ないなぁ。」と思っていたんですけど、意外と取り壊されていないです。取り壊したほうがお金がかかるのかもしれない。大阪市からビルの管理を任されている方がいて、その方が「ここには若い人が入居しているので」っていう話をして、取り壊さないように働きかけていただいているんだと思います。
今回「水辺生活」の実践されている方としてお話しを聞かせていただいた中で、「人のつながり」がひとつのキーワードかなと思うのですが、何がコンピュータコントロールさんをこのビルへ導いたと思いますか?
探し当てたのは人のつながりですが、そこからは直接電話してお願いしましたよ。返事出るまで1ヶ月ぐらい待ちました。加藤汽船ビルを教えてくれた知り合いが言うには、まちなかを車やバイクでなく歩き、せめて自転車で回ると、良い物件を見つけられるらしいですよ。「まちを見る」っていうのが探すポイントですね。どうもありがとうございました。
(09.01.17)